【フットサル場物語(下)】

とある日曜日の昼下がり、フットサル場でソサイチ(7人制のサッカーみたいな)の大会に参加したチームのお話。

当日に2人のドタキャンから2人のドタサン(助っ人参加)でなんとか7人以上揃えて大会に臨める事になりました。

さぁ試合開始!緒戦はみんな体が起きてないようで、動きが鈍くパスもつながらない。相手はおそらく一回り以上若いに違いない子たちだ!!ひょいと失点してしまいそのまま試合終了。。

負けてしまっても下を向く者はいない!!30代頭くらいはくやしい顔や、負け惜しみの一言は出ていたが、もうくやしいの「く」の字も彼らの表情からはうかがえない。


額に浮かぶ汗と弾む息、体を冷ます春先の風が日頃溜まったものを洗い流す、彼らはそれを感じるだけでいい…。

酸素の行き届かない頭で感じる浮遊感は美酒同様、勝敗なんてどうでもいい…。もうほろ酔い。テヘペロ(๑´ڡ`๑)

怪我は怖いので体は投げ出さない!ボディコンタクトは避ける!髪の毛の生え際は保護区域なのでヘディングは無理。

そう彼らは背負うもの、守るものがあるからあらゆる制限の中で戦っているのだ!!

さて、2回戦が始まり、ウタロは交代枠1にあやかりピッチ脇で休憩、チームメイトを応援していた。

体も温まり緊張もほぐれたてきたのでみんなの動きが軽やかに、ボールも人もよく動くようになってきた。

すると本日のMVPチームメイトOが左サイドから中央ゴールに向かい斜めにドリブルを開始!

現役時代全国大会に出場するような高校でサッカーをしていたOの巧みなドリブルは…あれ…?消えた!!

かと思ったらOの体は地面と平行になり横たわっていた。

なんとOはボールの上に乗っかり自滅転倒。相手との接触はなし、スッコーン!でもズッコーン!でもない、ペチャ!という感じで…

周りからはクスクスと笑いが漏れ、ウタロも腹を抱えて笑った。芸人が見ていたら羨む天然物のコケ(^o^)

しばらくすると、左手を抱えたOがピッチ脇のウタロに近づいてきて交代を要求。

O「手ヤバイ!!」

と言い残しピッチを後にした。

交代で入ったその試合はウタロも得点を決め大活躍!!いつもならピッチ外で試合を見ているウタロ妻と子どもたちの黄色い声援が送られてくるのだが…届かない!?

脇目でピッチ外を見るとウタロ妻は携帯を片手に右往左往していた。

試合が終わりほろ酔い戦士達が帰って来ると、Oは左手をアイシングしながら背中を丸めちょこんと座っていた…内股で。

O「めっちゃ腫れてる…折れたかも…」

見るとOの左手首は象の足の様になっていた。もっとよく見るとOの目も象の様につぶらな目になっていた。

まるで穴に落ちてただ助けを待つ子象の様なOは、しきりに骨折をしたことのある人にどんな感じかを尋ねている。

手の甲を骨折したことのあるウタロはOにポキっと音が鳴ったか、気持ち悪くなったか等を聞いてみたが、鳴ったような鳴ってないような、気持ちは悪くないけど沈んでるとか言っていて頭の中錯乱していた。

隣ではウタロ妻とチームメイトWが日曜日に救急で診てくれる病院探しに奔走している。

もう救急車で良いと思うけどOは断固拒否。

やっとこさ診てくれる病院が見つかったところでOは自ら運転して向かうと言い出した。頭の中相当やられている…みんなで必死にとめてタクシーを呼んだ。

少し落ち着きみんなの説得に応じ、Oは自分の車と子ども2人とパパ友2人を残しフットサル場を後にした。この言葉を残して…

「時が戻るなら戻したい」by O

1人減り交代なしになったウタロのチームは残りの試合を全勝見事に優勝した。

筋書きのないドラマ、当日人数が2人減り、Oの働きかけで2人増え、そしてOは負傷し病院送り、人数ギリギリのチームは優勝、Oの車と子どもたちはOの助っ人が送り届ける。

怪我したのがOじゃなかったら…と考えてしまうのはウタロだけだろうか…

現実が非現実を超える、映画やドラマにも描けないことが時として起こる。

それに立ち会った時、人はどう感じるのか…

何も感じません。というか感じている余裕はありません。

後になって落ち着いて情報を整理した時におかしなことが起こったんだな〜と思うのです。

そんなこんなことが、とある休日のフットサル場で起こったのでした…。

…後日、Oは病院を受診し、手首の骨は砕けてしまい、手術をし1週間の入院を要するとのことでした…。

怪我とは無縁のプレースタイルと自負していたのが仇となったか…各々自戒とする出来事とし、そしてOがまたフィールドに戻ってこれるようみんな気を使うのでした。

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